文部科学大臣賞(中学生部門)
『消えたアゲハチョウ』

4月 27th, 2011 | By | Category: 第20回/2010年度入賞作品

 

静岡県

浜松西高等学校中等部2年生

永田 真理奈/Marina Nagata 

 

 私達の毎日の豊かな暮らしは、遥か昔に地球に生命が生まれ、長い長い年月をかけて、命の糸を紡いできた恵みによって成り立っています。

 私の祖母の家には、客間の座敷の広縁から泳ぐ鯉、松やつつじ、椿などが眺められるようになった石垣づくりの小さな庭があります。その庭の向こうには、夏みかんやユスラウメ、山吹などの木が生い茂り、四季折々の花がいつも表情を変えながら咲き誇っています。東隣の家には、みかん科のからたちの生け垣があったので、毎年、夏休みに祖母の家に行くと、この二軒の間をアゲハチョウが何匹も何匹も美しく舞う姿を見かけました。

 去年の夏、祖母の家に遊びに行った私は驚きました。一年で、祖母の家のまわりの様子が変わってしまっていたのです。西側の畑は分譲住宅地になり、真新しい家が数件建っていました。白爪草やたんぽぽ、彼岸花が咲き乱れていた田んぼに続くあぜ道は、用水路までコンクリートで固められ、草の一本も生えていません。東側のからたちの生け垣のあった場所は、自動車の部品工場になり、南も北も住宅が迫っています。まるで、祖母の家だけが箱庭のように取り残されてしまったようです。みかん科の植物を食草とするアゲハチョウは、激減し、一匹だけが寂しそうに飛んでいました。夏みかんの葉の裏を見ると、アゲハチョウの卵が一枚の葉に何個も産みつけられている状態でした。生まれてくる幼虫の最初のえさとなる命の葉です。これでは、えさ不足になるかもしれません。あんなにたくさんいたアゲハチョウはどこに行ってしまったのでしょう。とても心が痛みました。

 人類は、今、自分たちを取り巻く環境について真剣に考えなければならない時にきています。汚した水やゴミも、自分の目の前から消えれば終わりではありません。私達は、その先を知り、想い、考えなければなりません。乱獲や外来種の問題、地球温暖化も深刻です。何が私達を支えてくれているのか、生態系はとても複雑で蜘蛛の巣のようにつながりあっているそうです。一見、人間には関係ないと思われる名も知らない生き物でさえ、何かを糧にし、何かの糧になり、巡り巡って私達を支えてくれているのだそうです。

 空や海や大地、太陽や水、植物や動物、ふと身近に感じる自然は、私を元気づけ、感謝の気持ちを思い出させてくれます。この胸の奥からわき上がる気持ちは、遥か昔から受け継がれた遺伝子の記憶のように感じます。この思いを忘れてはいけないのです。

 地球を壊すのも、守るのも人間にかかっています。私達が生物多様性に感謝し、地球環境を支える側のかけがえのない仲間になること、それが、地球に生きるすべての生命の願いだと思います。人間だけでは生きていけないのですから。

 

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