第20回/2010年度 
高円宮賞(小学生部門)
『ジャコウアゲハが教えてくれたこと』

 

兵庫県

姫路市立網干西小学校6年生

三枝 弘典/Hironori Mieda

 

 ぼくは、揖保川のそばに住んでいる。揖保川の土手は、四季によって、様々な感じ方ができる。

 春。寒い、寒い冬を越したことを祝うように咲き誇る土筆、日本タンポポ、菜の花。

 土筆のび 雲雀舞うなり 天高く

 夏。海より青い空に、白い白い雲が居座る。青々と生い茂った夏草。そこを飛び回る飛蝗、蝶、蜻蛉たち。そして夏の終わりに思うこと、

 夏草や 昆虫どもの 夢の跡

 秋。長い夜の間夜通し鳴き続ける秋虫たちや土手を真っ赤に染める曼珠沙華の花。

 曼珠沙華 土手一面の 赤い帯

 冬。ススキにホオジロがとまり、木枯らしが吹く。すると揖保川に舞い降りるマガモやヒドリガモの群れ。

 ススキ枯れ 今年もカモが やって来る

 この四季折々の中で、特に気に入っている揖保川の自然は、夏に何百匹ものジャコウアゲハが土手の道を飛び交い、まるで黒いトンネルをくぐっているような不思議な気持ちになれたことだ。

 しかし、この状況は一変した。三年前に、川の工事で土手の半分が掘り返されてしまいジャコウアゲハの食料のウマノスズクサの生息地も破壊されてしまった。ジャコウアゲハは、ウマノスズクサしか食べない。工事の前に、ぼくは、父と姉でウマノスズクサの移植とジャコウアゲハのサナギの避難をさせたり、ジャコウアゲハの保護をみんなに訴えた。しかし、ぼくたちだけでの活動だけでは、限界があり大きな効果は得られず、ジャコウアゲハは、ことのほか激減してしまった。

 ぼくが、非常に悔しく残念に思うのは、地域の人は、ジャコウアゲハの激減に気づいているが、あまり気にとめていないことやジャコウアゲハの生態や市蝶だということを知らない人が多いようだ。だからもっと、もっとあのときに訴えればよかったということだ。

 たかが蝶の一種や二種ぐらい消えたって人間の生活には何の不便もない。生態系もそれほど変わらない。大げさに言うなと思われるかもしれない。しかし、自分たちの周りの環境をみんながきちんと知って、どんな小さなことでも環境について良いことを実行する。こういう気持ちが環境を守るということだと思う。この気持ちがないと、ジャコウアゲハだけでなく他の生物まで、激減や絶滅の危機にあうだろう。そして、自然を失った人間もやがて絶滅するという結末が見えてくる。

 人間は、生態系の中の食物連鎖を自分たちの都合で切ってしまう。その結果多くの生物を絶滅に追いやった。だから、今一度その鎖をつなぎ直して、自分もその鎖でつながる一員だという自覚を持って行動すべきだ。
 だからぼくは、今日もジャコウアゲハのパトロールに出かける。再び、黒いトンネルを通れることを祈って。

 


鶯、雲雀、燕たちのさえずり。