外務大臣賞(中学生部門)
『森の人を守れ』

 

大阪府

立命館宇治中学校2年生

河之口 みな/Mina Gonokuchi

 

地球の運命は人間が「定住」という生き方を見つけた時から少しずつ狂い始めたのかもしれない。人間はより豊かな生活を求めて欲をだし、国という縄張りをつくった。そして更に多くのものを手に入れる為、戦争という殺し合いを繰り返し、やがて開発という破壊も始めた。開発を進めるには森やそこを住みかにしている動植物が邪魔になった。森はどんどん削られ、コンクリートで造った世界が広がっていった。人間はこれが幸福な生活なのだと勘違いをした。そしてついに取り返しの付かないところまできてしまった。

 人間はやっと地球の環境について真剣に話し合うようになった。それでも世界が一致して同じ方向を向くことはない。先に環境を破壊して豊かになった先進国は、これ以上の環境破壊はやめるべきだと主張し、発展途上国は、先に破壊しておきながら同じ事を求めるのはおかしいと主張する。どちらの主張にもまだ利益という醜いものが見え隠れする。

 私たち一家は一年前、赴任先だったアジアの国から帰国した。久しぶりに戻った日本はエコブームに沸いていて、我が家でもほとんどの家電をエコ商品に買い換えた。母も河川を汚さないという植物性の洗剤を買ってきた。しかし、私たち家族はこの洗剤を使うたびに重い気分になる。環境にやさしい洗剤の原料はやし油で、主にマレーシアやインドネシアが原産だ。ボルネオの上空から下をのぞくとジャングルと見間違えるほどのやし油のプランテーションが大地に広がっている。もちろんそのプランテーションはジャングルを切り開いてつくられたものだ。私はそこで取れるやし油の90%が日本向けであると聞き、更にショックを受けたのを覚えている。この辺りには「森の人」とよばれるオラウータンや他の希少動物がたくさん生息している。

 「森の人」は森がなければ生きてはいけない。そんな場所で多くの農薬を使用し、農園で働く労働者はもちろん近隣の住民にも多くの健康被害が出ているという。また、河川に流れ込んだ農薬は更なる自然を汚染し、多くの動植物を絶滅へと追い込んでいる。

 日本で売られている地球にやさしい洗剤はアジアのジャングルを破壊しているのだ。こんなばかげたことがあっていいわけがない。日本人は自分の国の川さえきれいになればそれでいいのか。アジアにお世話になった私はとても胸が痛む。日本はかつて戦争でアジアを苦しめた歴史がある。次は環境破壊で苦しめるつもりなのか。やし油の用途は幅が広い。もしこれからも使い続けるのであれば、価格を何倍も高く設定し、その分を原産国の環境監視や改善に当て、絶対に環境に影響がないように対処すべきである。

 地球上の全ての生物は互いに支えあって生きてきた。私たち人間が正しい行いをすれば地球はこの先もずっと元気でいられるはずだ。